顎の骨が壊死してしまう可能性

薬剤関連顎骨壊死とは

薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)という状態があります。これは、いわゆる骨粗鬆症を抑制する薬を服用、注射されている事が多い高齢女性に発生しやすいものです。骨は常に壊されて作られる、という作業を行っていますが、骨粗鬆症は壊される方向に傾いた状態と考える事ができます。そのため骨粗鬆症を抑制する薬の多くは壊されるのを止める作用を持っています。これは正常に骨が作り替えられる事を抑制するという意味です。

骨粗鬆症を抑制する薬を使用している状態で、感染と炎症が起こると骨が壊死する可能性が高くなると考えられています。口の中ですと、歯周病や歯の根にできる病巣などは感染と炎症が起こった状態です。歯を抜いた後に顎骨壊死がよく認められる事から、以前は抜歯するとよくないと考えられてきました。しかし、今では感染、炎症がある歯を放置することにより顎骨壊死が起こり、それらの歯を抜歯した際に顎骨壊死が明確になるのではないかと言われています。できれば骨粗鬆症の薬を始める前に歯科治療を行い、リスクのある歯は適切に処置しておいた方がよいです。

ただし、骨粗鬆症の薬には色々な種類があり、顎骨壊死のリスクが低いものからある程度高いものまであります。がん患者さんの骨転移を抑制する注射薬などはリスクが高いとされています。最近では免疫力を下げるようなステロイドやリウマチの治療薬などでも顎骨壊死が起こるかもしれないと言われています。そのため、服用している薬のリストや定期的に注射されている薬剤などについてお伺いする必要がありますので、予めお薬手帳などを持って来院して頂きますとスムーズです。注射薬はお薬手帳に書いておりませんので、注射されている場合には是非教えて頂けようお願いします。ゾメタ、プラリア、ランマーク、イベニティなどといった注射薬が該当します。

自己判断で骨粗鬆症の薬をやめてはいけません

以前は抜歯前に骨粗鬆症の薬を休薬するという話がありましたが、現在のエビデンスでは休薬するメリットは明確ではなく、転倒による骨折、要介護リスクなどを考えるとあまり休薬を積極的に行う理由はないのではないかと言われています。そのため、歯科受診するからといって勝手に自己判断で薬をやめてはいけません。たまに自己判断でやめてしまう方がいらっしゃいますが、大変危険です。

口の中を綺麗にしましょう

感染と炎症が顎骨壊死の可能性を高めると考えられています。歯磨きや歯周病の治療を行い、口の中を綺麗にすることでそのリスクを下げる事ができます。また、予後不良歯は無理に残さず抜歯をすることも重要です。
骨粗鬆症の薬を飲んでいるから歯科治療ができない、というわけではありません。現在のエビデンスでは一般的な骨粗鬆症の薬を飲んでいる患者さんの0.05%~0.3%程度に顎骨壊死が起こると言われています(1万人中5名から30名程度)。かなり低い確率ですから、顎骨壊死が怖いので歯科治療を受けない、というのは本末転倒です。

医科の先生にお問い合わせすることがあります

何か外科的な処置が必要になった場合には、内科や整形外科の先生にお問い合わせをする事が多いです。現在の全身状態などをお伺いして、外科処置が可能かどうかを判断させて頂きます。

参考

MRONJのポジションペーパー2022(英日両記ver)

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